アオイちゃんのサッカー試合レビュー
ここでは、アオイちゃんが趣味でメモしてたサッカーの試合レビューを一部加筆して公開しちゃうぞ。【72年欧州選手権予選 イングランド対西ドイツ イングランドホームゲーム】
ドイツ史上最強と評価される時期の西ドイツ代表の好ゲームとして有名な試合。
当時の欧州選手権は予選で4か国まで絞る方式。予選はホームアンドアウェーのグループリーグの1次予選と、1位通過同士でホームアンドアウェーで戦う2次予選の方式。
この試合は2次予選のファーストレグ。
なお、イングランドは70年W杯で交代策の失敗から西ドイツに敗北。リベンジマッチの意味合いがあった。
イングランド 4−4−2
......10...9......
..11...4...8...7..
...3...5...6...2..
.........1........
1 バンクス
2 メイドリー
3 ヒューズ
4 ベル
5 ムーア
6 ハンター
7 リー
8 ボール
9 チバース
10 ハースト
11 ピータース
17 マーシュ(60分ハーストと交代)
西ドイツ 4−3−3
...11...9...7...
....6..10...8...
..3...5...4...2.
........1.......
1 マイヤー
2 ヘッティゲス ハーストをマーク 交代出場したマーシュもマーク
3 ブライトナー リーをマーク
4 シュバルツェンベック チバースをマーク
5 ベッケンバウアー リベロ
6 ヴィマー ボールをマーク
7 グラボウスキー ヒューズをマーク
8 ウリ・ヘーネス ピータースをマーク
9 ゲルト・ミュラー 頻繁に下がってくる。ベルのマークが多い模様
10 ネッツァー ベルをマーク
11 ヘルト メイドリーをマーク
イングランドは定番の4−4−2。攻撃の起点はムーアとボール。ボールはドリブルで仕掛けるシーンも多く、サイドに開くことも多い。セントラルMFとウイングの両方を兼ねるような感じ。後半からはボールが目立たなくなり、ベルのゲームメイクが目立つようになる。
守備時はフォーメーションに割りと忠実。基本的にはマンツーマンディフェンスだけど、ある程度ゾーン的な守り方をしている。
マーク対象は西ドイツと対になっている。
ただ、徹底的にマーク対象を追いかけるわけではない。攻め込んでくる間は追いかけるけど、直接的なピンチに関わらない状況で敵を深追いはしない。
基本フォーメーションが整っているときは近くに来た敵をマークという感じ。マーク対象にこだわるようなところはない。
攻撃ではフォーメーションがかなり流動的。左右の入れ替わりであったり、追い抜く動きを多用。ただ、流動性はFWとMFにほぼ限定されており、ダイナミックさには欠ける。
ウイングはサイドに張り付くようなプレーは少なく、セントラルMFとの左右入れ替わりが多い。
西ドイツは4−3−3。攻撃の起点はベッケンバウアーとネッツァー。
74年W杯のときよりベッケンバウアーは頻繁に中盤に上がって来る。
マークは徹底する形なので、流動的に動くイングランドに対応してフォーメーションがぐちゃぐちゃになっていることが多い。フォーメーションを整える意識は希薄。
マークの受け渡しは限定的。マークがずれてしまったときは即座にフォローに入る切り替えの早さがある。
ただ、後半はどんどんマークのずれが多くなる。意図して変えたわけではなさそう。
ヴィマーが攻守に非常によく動き回っており、中盤を活性化させている。74年W杯でレギュラーの座を奪ったボンホフとよく似たタイプ。
74年W杯に比べるとブライトナーの攻撃参加が大人しいように感じるが、これはベッケンバウアーとのバランスの問題なのだと思う。
ヘッティゲスは守備専門という感じで、フォクツのほうが現代的なサイドバックだと思う。
【試合の流れ】
雨は降っていないと思うが、グランド脇が水浸しであり、ピッチは相当ぬかるんでいる模様。雨直後なのだと思う。滑ったり足をとられるシーンが非常に多い。
試合開始直後はイングランドの猛攻に西ドイツが慌てて波状攻撃を受けるも耐えしのぎ、試合は落ち着いた。
ベッケンバウアーとネッツァーのゲームメイクが安定し始めると西ドイツ優勢に。イングランドは中盤で守備を積極的にしないこともあって中盤は西ドイツが支配。
前半26分。ゴール前での敵のミスキックをゲルト・ミュラーが反応してワンタッチでヘルト。さらにワンタッチでウリ・ヘーネスがシュートで先制。
敵のミスキック前から含めてお手本のような完璧な攻撃。
イングランドはフィジカルを武器に攻め込むも、精度に欠き、決定的な場面は少ない。
いい形になりかけてもベッケンバウアーがすかさずカットしたり、マイヤーが好セーブを連発したり。
後半は西ドイツが攻勢を弱めたこともあってイングランドの攻め込む場面が増える。
問題なく守っていた西ドイツだけど、徐々にマークのずれや、マークの受け渡しが増え始める。恐らく意図したものではないと思うから、苦しい時間帯だったのだと思う。
中盤から徹底マークしていた守備もペナルティエリア付近にFW以外帰陣して待ち構える形が増える。
イングランドの優勢はどんどん強まり、一方的な展開に。両サイドバックもガンガン上がってゴール前まで進出してくる。
ボールを落ち着かせてベッケンバウアーとネッツァーがゲームメイクし始めると次第に挽回。ベッケンバウアーがゴール前まで走り込んで惜しいシーンもつくる。
しかし、後半32分、ベッケンバウアーが前に出ていた状態のときに右サイドに開いていたピータースとのワンツーでベルがスペースに抜け出し、シュート。
こぼれ球を左サイドから詰めて来ていたリーがゴール。
ネッツァーがベルのマークを離してしまったことが直接的な原因。本来ならカバーリングに入るはずのベッケンバウアーが上がっていたことも不運だった。
さらに、ピータースのマークはヘーネスが離してしまっており、加えて誰もマークを受け取っていなかったため、ベッケンバウアーがピータースにつり出される形になった。
ピータースのマークに誰かがついていれば、ベッケンバウアーはベルのマークに行けたかもしれない。マンツーマンディフェンスの欠点が出た形。
なお、ピータースが右サイドにいた理由は攻撃の流れの中でリーとサイドを入れ替えてから戻していなかっただけだと思う。西ドイツのマークのずれがどんどん大きくなっていたので、失点するべくして失点したといえると思う。
同点となって再び優勢となるイングランドだったが、後半40分、速攻から抜け出したヘルトをムーアが微妙な位置で倒してしまいPK。
スライディングに行ったのは確実にエリア外だけど、実際に足が当たったのはライン上かどうかというところ。
キッカーはネッツァー。完璧な読みとタイミングで反応したバンクスにセーブされるも弾き出しきれずにゴールイン。
リードされ、パワープレーになるイングランド。互いに戦術などはほとんど関係なくなり気持ちで戦うような状態に。目の前の敵をマークするという感じに。
パワープレーのイングランドとカウンターの西ドイツという構図に。
後半44分、グラボウスキーのフォアチェックからボールを奪い、ヘーネスにパス。
ヘーネスが個人技で横方向にドリブルで敵を引きつけ、ゴール前でエアポケットのようにフリーになったゲルト・ミュラーにパス。
すぐにカバーが入るも、得意の反転からの素早いシュートを防ぎきれず。ゴール隅に決まる。
攻撃で存在感が薄かったゲルト・ミュラーが最後にきっちり仕事をこなす。
イングランドは反撃及ばずタイムアップ。
【イングランド】
1 バンクス
イングランド史上最高、当時世界最高のGK。
2 メイドリー
この当時としては攻撃的なサイドバックだと思う。
3 ヒューズ
この当時としては攻撃的なサイドバックだと思う。ゴール前まで上がってシュートすることも。
4 ベル
パサータイプのセントラルMF。マンチェスターCの英雄らしい。攻守にバランスの良さそうなタイプだけど、攻撃的なタイプ。運動量や機動力にも優れるタイプ。
5 ムーア
伝説のキャプテン。イングランド史上最高のDF。パスがとても正確。ベッケンバウアーのような攻め上がりはない。
6 ハンター
パワフルなストッパー。
7 リー
このメンバーの中では能力の低い選手になると思う。決して守備力の高くないブライトナーに抑え込まれてしまっている。ドリブラー。
8 ボール
パスもドリブルも何でもこいという感じの万能タイプ。サイドに開く動きが多い。自分が動くことでゲームをつくっていくようなタイプ。66年W杯や70年W杯のときほどオフザボールの動きは目立たない。
9 チバース
巨漢センターフォワード。シュバルツェンベックと終始バトルを繰り広げる。ロングスローが得意。
10 ハースト
いいところなし。衰えているのだと思う。動きにもキレがないように思う。ヘッティゲスに完全に抑え込まれてしまった。
11 ピータース
コンプリートMFと呼ばれていたらしい。技巧派タイプ。ドリブルよりはパスの選手だと思う。
17 マーシュ(60分ハーストと交代)
ハーストと交代でそのままハーストと同じセンターフォワードで出場。目立たず。機動力で勝負するようなタイプだと思う。
【西ドイツ】
1 マイヤー
70年代を代表するGK。好セーブを連発。
2 ヘッティゲス
ハーストを徹底マーク。攻撃の意識は低く、フォクツよりも守備的。ハードマークが売りで鉄の足の異名を持つ。
3 ブライトナー
74年W杯よりも攻撃頻度は低い。足下が悪いせいか、ダイナミックなプレーが影を潜めている。強烈なミドルシュートもなし。ただ、大胆不敵なプレーが多い。
4 シュバルツェンベック
長身ストッパー。チバースを徹底マーク。完封した。
5 ベッケンバウアー
皇帝の異名を持つ史上最高の選手の1人。リベロ。74年W杯より攻撃頻度は高く、攻め上がる位置も高い。足が滑らなければゴールを決めていたと思う。
6 ヴィマー
かなり目立つ活躍。運動量豊富で攻守に活躍。ボンホフと遜色ない存在。前半に比べると後半はちょっとパフォーマンスが落ちた。
7 グラボウスキー
地味。
8 ウリ・ヘーネス
縦横無尽なドリブルで活躍。守備は下手。
9 ゲルト・ミュラー
爆撃機の異名を持つドイツ史上最高のFW。守備にかなり積極的。マーク対象を追って結果的に下がってくるというよりは自ら積極的に下がって守備に参加している感じ。ネッツァーの守備が甘いせいかベルを追いかけることが多いように思う。存在感が薄かったけど、最後の最後に仕事をやってのけた。でも、よく見ると常にポジションを微修正したり、マークを外す動きを入れたり、ゴール前には必ず詰めていたりやることはやっている。
10 ネッツァー
ベッケンバウアーと共にゲームメイク。通常は中盤の低い位置にいることが多い。ピルロに近い動きかもしれない。守備の意識は高くないし上手くもない。オベラートのほうが守備は献身的。
11 ヘルト
典型的なウインガー。グラボウスキーより目立つ。足が速い。このときのパフォーマンスなら74年W杯でレギュラーにだったヘルツェンバインよりいいと思う。ガンバ大阪の元監督。
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